男性泌尿器科
男性泌尿器科
泌尿器科は、腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿の生成・排尿に関係する臓器や、副腎などの内分泌系の臓器、前立腺・精巣・陰茎といった男性特有の臓器など、尿路とその周辺臓器を対象とする診療科です。扱う病気は、尿道炎・膀胱炎・尿路結石・腎盂腎炎・頻尿・尿失禁・性感染症・前立腺肥大症・神経因性膀胱などの良性疾患から、前立腺がん、膀胱がん、腎細胞がん、腎盂尿管がん、精巣腫瘍、陰茎腫瘍などの悪性腫瘍まで広範囲に及びます。 泌尿器科というと受診をためらう方が多く、症状のある方で、受診に至るまでには男性では4人に1人、女性では10人に1人と言われています。泌尿器の症状は加齢とともに誰もが経験するもので、恥ずかしいことではありません。当院ではプライバシーに配慮し、患者様との対話を大切にしたクリニックをめざしております。頻尿、排尿困難、尿失禁、血尿などの症状はもとより、腎臓•膀胱•前立腺などの臓器についての病気や性病など泌尿器で心配なことがあれば、一人で悩まずに、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
日常的に起こりやすい症状でも、詳細な検査を行うことで重大な病気の早期発見につながることもよくあります。泌尿器に心配なことがあれば、一人で悩まず何でもお気軽にご相談ください。
前立腺肥大症とは、文字通り前立腺が肥大することにより、様々な排尿の症状を引き起こす病気です。前立腺が肥大する原因は完全にはわかっていませんが、男性ホルモンなどの性ホルモン環境の変化が関与していると考えられています。前立腺肥大症を発症する明らかな危険因子は加齢ですが、その他に遺伝的要因、食生活、肥満、高血圧、高血糖、脂質異常などがあげられます。
前立腺は男性にしかない生殖器の一つで、前立腺液といわれる精液の一部を作り、精子に栄養を与えたり、精子を保護する役割を担っています。
前立腺は直腸と恥骨の間にあり、膀胱の出口で尿道を取り囲んでいます。このため、前立腺が肥大すると尿道が圧迫されて、排尿に関わる様々な症状が出現します。前立腺は、尿道の周囲にある内腺とその周りにある外腺に区分されますが、前立腺肥大は尿道周囲の内腺に発生し、前立腺がんは外腺に発生します。
一般的な成人男性での前立腺の大きさは、体積で表した場合には20ml以下と言われています。よく、「クルミぐらい大きさ」と例えられます。ところが、前立腺が肥大すると、クルミ程度の大きさのものが、卵やみかんの大きさになります。
前立腺肥大症の頻度は、年齢とともに多くなり、50歳から頻度が増加します。50歳で30%、60歳で60%、70歳で80%、80歳では90%に見られますが、そのすべての方が治療を必要とする症状を伴うわけではありません。前立腺の肥大と排尿症状を伴い、治療を必要とする、いわゆる前立腺肥大症の頻度は、その1/4程度と言われています。
前立腺肥大症では、排尿症状(排尿困難をはじめとする、尿を出すことに関連した症状)、蓄尿症状(尿を貯めることに関連した症状)、排尿後症状(排尿した後に出現する症状)がみられます。
排尿困難とは、尿が出にくい症状の総称ですが、「尿の勢いが弱い」、「尿が出始めるまでに時間がかかる(尿を出したくでもなかなか出ない)」、「尿が分かれる(尿線が分かれて出る)」、「排尿の途中で尿が途切れる」、「尿をするときに力まなければならない」などの症状があります。
前立腺肥大症では、多くの場合頻尿がみられます。頻尿については、一日に何回以上という定義はありませんが、昼間(朝起きてから就寝まで)については概ね8回より多い場合、夜間は就寝後1回以上排尿のために起きる場合、それぞれ「昼間頻尿」、「夜間頻尿」と考えられます。「尿意切迫感」は、急に我慢できないような強い尿意が起こる症状を言います。また、尿意切迫感があって、トイレまで間に合わずに尿が漏れてしまうような症状を、「切迫性尿失禁」と言います。尿意切迫感があり、頻尿を伴うものを過活動膀胱といいますが、前立腺肥大症の患者様の50~70%が過活動膀胱を合併します。過活動膀胱では、まだ膀胱に十分尿が貯まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してしまうので、すぐに排尿したくなってトイレに行く、つまり頻尿になります。
前立腺肥大症で、排尿後に膀胱内に尿が多量に残るようになると、膀胱に貯められる尿量が減って、結果的に頻尿になる場合もあります。
「残尿感」とは、排尿後に「どうもすっきりしない」、「尿が残っているような感じがする」といった感じのことです。また、尿が終わったと思って、下着をつけると尿がたらたらっともれて下着が汚れることがありますが、これを「排尿後尿滴下」と言います。
前立腺肥大があっても、必ずしもすべて治療が必要になるわけではなく、その症状の程度と、生活への影響によって決まります。また、前立腺肥大症は加齢とともに徐々に進行しますが、前立腺サイズや症状がまったく変わらないことも少なくありません。したがって、前立腺肥大症でも自覚症状が軽度であれば、経過観察も可能ですし、予防的に治療をする必要もありません。しかし、前立腺肥大症が進行すると、症状の悪化のみでなく、次のような様々な合併症を引き起こすことがあります。
前立腺肥大のために、尿道粘膜の充血が起こり、前立腺部の尿道粘膜から出血して、血尿が出やすくなります。
排尿障害のために、膀胱内に残尿が残るようなると、尿路感染が起こりやすくなります。
膀胱内に尿が充満しているにも関わらず、尿が出せない状態。前立腺肥大が高度なほど起こりやすく、飲酒、風邪薬の服用や便秘が引き金となって起こることがあります。
膀胱内に常に残尿がある状態が長期間続くと、膀胱内に結石ができることがあります。
膀胱内に多量の残尿が残るようになったり、排尿障害のために膀胱壁が高度に肥厚すると、腎臓から膀胱への尿の流れが妨げられ、腎臓が腫れる状態(水腎症)となり、腎不全になることがあります。
膀胱内に常に多量の残尿が存在するために、膀胱内にそれ以上尿が貯められなくなり、まるでダムから水が溢れるように、尿道から尿が溢れ出て、いつも尿がちょろちょろと漏れる状態を言います。
前立腺肥大症に対しては、まず薬物治療が行われますが、上記のような合併症を発症した場合には、手術による治療が行われます。
検査として
などを行い、評価します。
前立腺肥大症の治療には、大別すると薬物治療、手術治療、保存治療の3つがあります。先に述べた、尿閉、肉眼的血尿、膀胱結石、腎機能障害、尿路感染などの前立腺肥大症による合併症が見られる場合には、手術治療が行われますが、それ以外の場合は、まず薬物治療が行われます。
前立腺肥大が尿の通過障害を引き起こす理由として、2つのメカニズムが考えられます。ひとつは、前立腺(平滑筋)が収縮して、尿道を圧迫することによります。もうひとつは、大きくなった前立腺が物理的に尿道を圧迫して、通りを悪くすることによります。こういったことから、3種類の薬剤が広く用いられています。交感神経α1遮断薬、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害薬、抗男性ホルモン薬です。
α1遮断薬(ハルナール®、フリバス®、ユリーフ®など)は、前立腺の収縮を緩め尿道の圧迫を解除して、尿が通りやすくします。
ホスホジエステラーゼ5阻害薬(ザルティア®)も同様に前立腺や膀胱の出口の収縮を緩め、尿が通りやすくします。
抗男性ホルモン薬(アボルブ®など)は、前立腺を小さくして、前立腺肥大による尿道の物理的な圧迫を軽減します。1年の内服で前立腺サイズが25〜30%縮小します。
その他、植物から抽出したエキスを薬にした生薬や、いくつかの漢方薬が前立腺肥大症治療に使われることがあります。
薬物治療を行っても、症状の十分な改善が得られない場合や、前述したような肉眼的血尿、尿路感染、尿閉を繰り返す場合、あるいは膀胱に結石ができたり、腎機能障害が発生した場合には手術による治療が行われます。100gm(mL)を超えるような巨大な前立腺肥大の場合には、開腹手術によって肥大した前立腺を摘出することがありますが、通常は、尿道から内視鏡を挿入して行う手術が行われます。最近では、レーザーを用いた、新しい内視鏡手術も行われています。
急性前立腺炎の多くは大腸菌などの細菌が尿道から侵入し、前立腺に感染することで起きますが、血液やリンパ液から細菌が前立腺に侵入して感染する場合もあります。症状としては、高熱(発熱)や排尿困難、排尿痛や残尿感、頻尿、全身倦怠感が生じます。急激に悪化した場合、敗血症などを併発する危険性があるため早期治療が重要です。
慢性前立腺炎は長時間座ったままの姿勢を取り続ける人、働き盛りの20~40代に多いのが特徴です。会陰部の不快感、排尿時排尿後の痛み、射精時射精後の痛み、精液に血が混じるなどの症状が現れます。治療は症状によって異なりますが、症状が改善するまでに数か月かかることもあります。
腎臓から尿道につながる尿路に結石ができる疾患で、結石のある部位によって腎臓結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石に分けられます。泌尿器科外来で頻度の高い疾患の一つで、20人に1人が一生に一度は罹患し、男性が女性の約3倍多いとされています。
結石の大きさや位置によっては激痛が起こり、発熱や吐き気、嘔吐を伴うこともあります。尿検査、画像検査(超音波検査・レントゲン検査・CT検査など)で診断がついたら、まず痛みを抑えます。その後、結石の大きさや位置を確認し、治療方針を検討します。4mm以下の小さい結石であれば、薬剤を使い自然に体外に結石が出る排石を待つ保存療法が基本になります。10ミリ以上の大きな結石や、自然排石が難しいと考えられる場合には、体外衝撃波結石破砕手術(ESWL)やレーザー砕石器などを用いた内視鏡手術が行われます。
前立腺がんは泌尿器系のがんの中で、近年最も増加傾向にあります。かなり進行するまで症状が無いケースがほとんどで、検診がとても重要になります。